虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)
心臓は、心臓の筋肉が収縮・拡張することでポンプの機能を果たしていますが、この筋肉に栄養を送っているのが、心臓の表面を走る冠動脈という血管です。
冠動脈は大きく分けて2本(右冠動脈と左冠動脈)があり、左冠動脈はすぐに2本(前下行枝と回旋枝)に分かれます。よって、冠動脈の主な枝は3本であり、この血管がそれぞれ枝分かれしていくことで筋肉の隅々にまで血流を送ることができます。
冠動脈疾患の主な病気は、動脈硬化によります。冠動脈が動脈硬化性の変化を起こすと、血管の壁の内部にプラークと呼ばれる沈着物が溜まるようになります。
このプラークがある程度大きくなり血管の内腔が狭くなると、心筋に送る血流が低下するために胸の痛みを感じることがあります。これを狭心症といいます。特に、体を動かす時に心臓が多くの血流を必要とするため、症状は出やすくなります。
また、突然プラークが破裂し、そこに血栓(血の塊)がついて血管が完全に詰まってしまう病態を心筋梗塞といいます。
症状
狭心症の典型的な症状は、階段を上る、小走りになるなど少し体の負担がかかったときに左胸が締め付けられる、圧迫されるというものです。左肩や左腕、顎に広がる痛みを伴うことがあります。症状はおおむね数分~10分程度です。状態が悪くなるとじっとしていても症状が出たり、冷や汗を伴ったり、症状が頻繁に起こります。これを不安定狭心症といい、心筋梗塞へ発展する危険があるためすぐに受診してください。
心筋梗塞になると、突然の強い胸痛が持続し、冷や汗、吐き気、息苦しさなども出る場合があります。このような症状があれば緊急を要しますので、救急外来などすぐに診てもらえるところを受診してください。
検査
心電図、心臓超音波検査が基本となり、状態に応じて血液検査、胸部レントゲンも必要です。
じっとしていると症状の出ない狭心症の方は、これらの検査でも全く問題のない場合も多いため、その場合には負荷検査(運動や薬で心臓に負担をかけ、変化を見る検査)や冠動脈CT(冠動脈を造影剤を用いたCTで評価する)を行うことがあります。さらに狭心症が強く疑われる場合には、カテーテル検査を行います。
カテーテル検査とは手首、肘、足の付け根の血管からカテーテルという管を挿入し、冠動脈の入り口に持っていき、そこから造影剤という薬を冠動脈に流すことで血管を撮影する方法です。
心筋梗塞を疑う場合には、一刻も早くカテーテル検査と治療を行うことが重要です。
治療
狭心症の場合、血管の狭い部分がどこか、いくつあるか、また他の病気との兼ね合いを考えてカテーテル治療を行うか、冠動脈バイパス術を行うかを決定します。
心筋梗塞の場合は、急を要するため早く取り掛かることのできるカテーテル治療を行うことがほとんどです。
カテーテル治療(PCI/経皮的冠動脈ステント留置術)…治療用のカテーテルを通して、血管の狭くなった/詰まった部位をバルーンでふくらませたり、ステントという金属の金網を入れることで血流を改善させます。
バイパス術(CABG)…全身麻酔下で胸を切開し、足の静脈や内胸動脈(肋骨の裏側を走っている血管)などをとってきて冠動脈の先につなぐことで、大動脈からの血流を確保する方法です。
またどの治療法であっても、治療と再発予防のための内服薬の併用が必要となります。