帯状疱疹とは?
帯状疱疹は、体の神経が分布している特定の領域に赤い帯状の発疹を引き起こし、しばしば強い痛みを伴うウイルス性の疾患です。また、この疾患は通常、左右の体の特定部位に症状が現れ、帯状の特徴的な形状を持ちます。
帯状疱疹の原因は水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)であり、初めて感染した際には水ぼうそう(水疱瘡)を引き起こします。水ぼうそうが治癒しても、ウイルスは神経節に潜伏し続けます。
高齢になったり、免疫力が低下したり、季節の変わり目や過度な疲労、体調不良などの要因が重なった際に、このウイルスが再び活性化することがあります。この再活性化が帯状疱疹の発症となります。
◎帯状疱疹の症状
症状としては、皮膚の表面に赤い隆起やブツブツが出現し、帯状に広がることがあります。経過とともに、これらの病変は水ぶくれへと変化し、約1~2週間後にはただれや潰瘍に進展することがあります。症状が自然に治癒すると、かさぶたが形成され、2~4週間後にかさぶたが自然に取れて完治します。ただし、帯状疱疹が重症化すると、点滴治療や入院が必要な場合もあるため、注意が必要です。
◎帯状疱疹の特徴
帯状疱疹において、特徴的な症状の一つは、発疹が現れる前の2~3日間から痛みや疼痛が発生することです。この疼痛は、ウイルスが神経節で増殖し、知覚神経から皮膚の細胞に炎症が広がる結果として発生します。痛みのピークは通常、発疹が出現してから約7~10日後に訪れます。
さらに、帯状疱疹に罹患すると、リンパ節の腫れ、発熱、頭痛、倦怠感、運動神経の麻痺など、他の症状も発生することがあります。
目次
帯状疱疹後神経痛
帯状疱疹が治癒した後でも、痛みが持続する状態が存在し、これを帯状疱疹後神経痛と呼びます。この疾患は、神経節がウイルスによって深刻な損傷を受けた場合に発生しやすく、痛みの程度は軽度から刺すような感覚や灼熱感までさまざまです。治療が遅れた場合や高齢の方に多く見られ、50歳以上の人々の約2割にこの症状が発症し、重症化すると数年にわたって痛みが持続することもあります。
帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹発症後の治療開始が72時間より遅れるとかかりやすいというデータがあります。50歳以上、糖尿病などの合併症があるといったことも帯状疱疹後神経痛の原因として挙がっています。
帯状疱疹の感染について
帯状疱疹は、接触感染によって他人に感染する可能性がある疾患です。感染源となる患部を直接触れたり、感染した浸出液が付着した物品(例: ドアノブ、衣服)と接触した際に、他の人に感染のリスクが存在します。ただし、水痘に感染経験のある人は、帯状疱疹から感染することはありません。
特に、帯状疱疹の水ぶくれをつぶしてしまうと、中にウイルスが含まれている可能性があるため、他の人に水痘として接触感染する危険性が高まります。したがって、特に乳幼児や水痘にかかった経験のない人が近くにいる場合には、感染拡大を防ぐために注意が必要です。
帯状疱疹の原因
帯状疱疹の原因は、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)というウイルスです。このウイルスは、水ぼうそうの原因ともなりますが、後に帯状疱疹を引き起こすこともあります。
VZVは、感染した後に神経節(神経細胞の塊)に潜伏しています。免疫機能が低下した際に、このウイルスが再活性化し、帯状疱疹が発症することがあります。再活性化のきっかけとしては、以下の要因が挙げられます。
◎ウイルス再活性化のきっかけ
- 体調の不調や病気
- 過度のストレス
- 高齢による免疫機能の低下
- がんや悪性腫瘍などの重篤な疾患
水ぼうそうは一般的に10歳以下の子供に感染が多いのに対し、帯状疱疹は40歳以上の成人に多く見られます。高齢に伴う免疫機能の低下、身体的な疲労、ストレスなどが発症のきっかけとなり、帯状疱疹は体中のさまざまな部位で発生する可能性があります。
帯状疱疹の発生部位
帯状疱疹の発生部位は個人によって異なることがありますが、一般的な割合を以下に示します。なお、これらの割合は一般的な傾向であり、個々の症例にはバリエーションがあることに注意してください。
◎帯状疱疹の発生部位
- 胸部(背中や胸の一側) – 約40%
- 腹部 – 約20%
- 腰部 – 約15%
- 顔(特に眼の周りや耳) – 約15%
- 首 – 約5%
- 腕や脚 – 約3%
- お尻 – 約2%
帯状疱疹の診断
◎前兆・初期症状
帯状疱疹の発症初期には、しびれやかゆみが感じられることがあります。この痛みやしびれは、通常、全身に広がることがありますが、特に顔に現れることが多く、持続的な痛みやしびれが続きます。初期症状は、虫さされや単純ヘルペスなどと誤解されることがあります。ただし、帯状疱疹は神経に沿って帯状に症状が広がる点が異なります。ウイルスの増殖を抑えるためには早期の医療相談が重要です。
◎診断方法
帯状疱疹の診断は主に以下の方法で行われます。
視診と問診
医師は患者の症状を観察し、病歴を詳しく尋ねることで診断を行います。
塗沫標本とギムザ染色
発疹の内容物を採取し、ギムザ染色法を使用してウイルス性巨細胞の存在を確認することがあります。
血清診断
血液サンプルを用いて、ウイルス抗体の存在を検査することがあります。
抗VZVモノクローナル抗体検査
ウイルス抗原を検出するために抗VZVモノクローナル抗体を使用する方法もあります。
2017年8月からは、水痘帯状疱疹ウイルス検査キット「デルマクイックVZV」が保険適用となり、発疹の内容物や潰瘍の浸出液を検体として、5~10分程度でウイルス抗原を検出することができるようになりました。
帯状疱疹の治療
◎抗ウイルス剤の内服
帯状疱疹の治療には抗ウイルス剤が使用されます。アメナリーフ、ファムビル、バルトレックスなどの抗ウイルス薬が、発疹が出現してから72時間以内に投与され、通常は1週間ほど継続されます。これらの薬物はウイルスの増殖を抑制し、治癒期間を短縮するのに役立ちます。72時間以上経過していても治療の効果が期待されます。
◎痛みの管理
疼痛を和らげるために、痛み止め(非ステロイド抗炎症薬)などの薬物が処方されることがあります。重度の疼痛がある場合には、神経ブロック治療が行われることもあります。
◎点滴治療
帯状疱疹が重症化している場合、アシクロビルやビダラビンなどの抗ウイルス薬を静脈内に直接注入する点滴治療が必要となることがあります。治療が遅れると大きな潰瘍が残る可能性があるため、早急に医療を受けることが重要です。
◎かゆみの緩和
かゆみがある場合、非ステロイド系の抗炎症薬(例: スタデルム)を外用することがあります。
帯状疱疹後神経痛の治療については、個人差があり、特定の治療薬が確立されていないことがあります。しかし、痛みを和らげるためにリリカなどの薬物が処方されることがあります。
帯状疱疹ワクチン
◎子供の場合
水痘に感染すると、通常、免疫系が抗体を生成しますが、この抗体の効力は時間の経過とともに弱まる傾向があります。約20年経過すると、抗体の保護力は低下することが知られています。したがって、加齢に伴い帯状疱疹の発症リスクが高まり、また帯状疱疹後神経痛のリスクも増加します。このため、帯状疱疹ワクチンの接種が推奨されています。
乳幼児期に帯状疱疹ワクチンを接種することが一般的です。帯状疱疹の予防のために、子供のワクチン接種をお勧めします。
◎50歳以上の方向け
2016年3月から、50歳以上の年齢層を対象に、帯状疱疹の予防のためのワクチン接種が可能になりました。このワクチンは生ワクチンの他に、2020年2月からは免疫機能が低下している人々(例: がん患者や膠原病患者)でも受けられる不活性ワクチンも提供されています。
不活性ワクチンは予防効果が高く、通常は2回接種が必要です。このワクチンは一般的に予防効果が5~10年ほど続くとされています。
注意事項・予防
◎帯状疱疹にかかった場合の注意事項
帯状疱疹にかかった際には、以下の注意事項を守ることが重要です。
患部を冷やさない
患部を冷却すると痛みが増すことがあります。お風呂に入ることで痛みが和らぐことが多いです。
水ぶくれを破らない
水疱を破ると二次感染のリスクが高まるため、水疱部分をこすらないようにしましょう。
他人にうつさない
水疱瘡にかかったことがない人(特に幼い子供たち)との接触を避けましょう。
◎帯状疱疹の予防
帯状疱疹の予防については、日常生活で疲労を避けるために十分な栄養と睡眠を確保することも重要です。